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2006年4月13日。当店のお客様のお2人と私で村祐酒造(株)の蔵見学に出発。途中道に迷い、村山専務さんに迎いに来ていただくというお粗末な結果となってしまいました。
蔵の敷地はかなり広いのですが、設備の規模は大きくはありません。しかしながら、設備の内容は充実。そこには、村山専務様ならではの工夫があちこちに見受けられます。断熱材を沢山つかった広い「麹室」とサーマルタンクの数の多さには特に驚かされました。分析室では、酒質向上のために日々研究がされています。
村山専務さんはとてもユニークな方です。長身で年齢は37歳くらいでしょうか。今回お会いした時の風貌は、綺麗に手入れされたおヒゲを蓄え、アーミールック調の服装をまとい、帽子には小さなサーチライトがついていました。一見、気難しそうであまり喋らないように思えるのですが、なかなか気さくな方で、頭の回転の速い楽しい方です。
今の「村祐」銘柄の酒造りのきっかけとなったのは、数年前に鑑評会の表彰を受けたその足で、営業に飛び込んだ東京の酒屋さんの言葉でした。「新潟の酒は、もういいよ!」この言葉に強い衝撃を受け、言い争いにもなった。それまで、鑑評会にも連続入賞し、酒造りには自信があったはずであった。蔵に戻ってからも、しばらくはこの言葉が脳裏から離れずにボディブローのように効いていました。
それでは、一体どんな酒をつくろうか。これまで十数年度の造りを経験し、オーナー杜氏という比較的制約を受けない自由な立場で色々と創意工夫をしてきた。その体験の中で、商品化に挑戦したい酒があることに、自分自身では既に気がついていた。砂糖のなかでも、最高峰と称される「和三盆」と呼ばれる高級なものがあります。「和三盆」は他の砂糖には無い品格のある甘味をもち、後味は冷ややかにすうっと綺麗に消えていく。
この味わいを自分の造る酒の中に出せないか。はっきりと目標を意識した酒造りに挑戦。この酒質は、新潟酒の代名詞とされる「淡麗辛口」が主流の新潟県の酒造業界からみると、まったく異質のタイプでした。ここから、村山専務の挑戦が始まります。
「村祐」銘柄を出して3年目ですが、その間に「酸」にこだわってみたり、いろいろ試したいことがあったりで、酒質のタイプは毎年少しづつ変化してきています。それでも、皆様から応援していただいてようやく多くのユーザーに認知されるようになってきました。この酒はドイツワインのようだと嬉しい評価をいただいています。某レストランでこの酒をサービスしたところ、お客様は日本酒であることに最後まで気がつかず、後に種明かしをしたところ、とても驚いておられたというお話しもレストランオーナーから聞いています。
ドイツワインに似ているという点では、香味も似ていますが、高価格商品ほど甘味が強いという点でも似ています。酒通を自称するユーザーには「辛口」を求める人たちが沢山いますが、先入観のない人や多くの女性に大人気の商品になりつつあります。是非、一度味わってみてください。当店の一押し日本酒です。
もう一つ、成分非公開という方針を貫いています。流通業者やマニアックなユーザーの多くの人が、酒をみるときに「酒の良し悪し」に関係なく、原料米の種類や、精米歩合何%などを聞いてきて、そのデータから品質や価格まで決めてしまう。
某酒販店で、酒をみて貰おうとした時に、目の前の酒を試飲するでもなく、原料米、精米歩合、日本酒度、酸度などの話で終わってしまった。目の前の酒のコメントは出てこなかった。この酒屋は一体何を考えているのか、酒屋としての資質を疑わざるを得ないと思った。こんなやり取りに辟易としています。一生懸命に造った酒が、そんなデータだけで判断されることが許せない。成分表を飲むわけではないので、それ以来、成分非公開を決めたそうです。
村祐酒造さんでは、妹さんやパートさんに手伝ってもらいながら、基本的には一人で酒を醸造しています。営業も配達も自分でやります。「村祐」銘柄、100石の小さな蔵ですが、感動を与えてくれる「酒」と熱いパッションに溢れる「生産者」がそこにいました。どうぞ、「村祐」銘柄を味わってみてください。 |
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