|
|
12月に入り寒さが一段と、身にしみる様になる新潟の山々も、頂きから白さが広がってくる。また、一夜にして広大な新潟平野も真っ白な銀世界に変わる。
小寒、大寒と寒さが一層厳しくなると酒蔵では寒仕込、手造りと、寒気の頃合いを計ってここ一番、高級酒の造りに入る。さあ、これからが本番だと蔵人達は本当に身も心も引き締まる。そして、吟醸造りが始まります。
寒仕込み、手造り、古い時代から日本酒造りのこの言葉は、冷房完備、機械化に今日にもやはり、根強く生き続けています。自然の寒気にこそ神経は一層張りつめるのです。
吟醸酒を造るには、一刻も目を離したり、手を抜くことは許されない。杜氏の豊かな経験と卓越した技能、それに酒造りにかける情熱が要求されるのである。
それでは吟醸酒が出来るまでを少々追ってみましょう。
まず、杜氏の仕事の第一歩は原料米の品種、品質を見極めることである。
吟醸酒の原料米は五百万石や山田錦の様に麹が造り易く、低温でもよく溶ける酒造好適米を使う。(山田錦という品種は大粒で、色沢のある心白米であり、吸水性、消化性が良く内容成分も優れており吟醸酒の原料米には最適である)
米を吟味したら精米をする。精米機の回転や流量、抵抗を調整しながら米の性質にあった精米を慎重に行なうのです。
現在では、吟醸酒の場合40%〜30%まで精白度を上げております。昼夜運転で60〜70時間もかけて丁寧に精白する。出来上がった白米は、急激な温度の降下を避け、3週間〜1ケ月静かに寝かせておく。
これを「枯らし」と言うのです。この枯らし日数が原料を処理するのに大きな影響を与えるのです。
また、米を洗う洗米は昔ながら「ザル研ぎ」で限定吸水と言い、浸漬時間をストップウオッチで計りながらの作業です。洗米水は仕込みの水と同様に厳しく吟味します。ちなみに醸造用水のミネラルは善玉で鉄とマンガンは悪玉であります。
次に「コシキ」と申しまして、大きな和釜(15石〜17石)で米を蒸します。 蒸す前の米の吸水歩合は30〜31%になる様にします。
吟醸酒の米洗いとか浸漬、蒸米は杜氏の熟練による「カン」が要求される代表とも言われます。杜氏の頭の中には、長い経験の間に作られた者指があり、目と指先で確かめながら仕事を進めるのです。
蒸米は外硬、内軟のサバケの良い蒸米に蒸し上げ、この蒸米の善し悪しが酒の出来具合の半分を決定すると言われています。
蒸し上がった米は飯ダメと言う木桶の中にいれて運ばれ、スノコに麻袋 を広げた上で冷やされ、添、仲、留と三段階に仕込まれ、温度、乾き具合が念入りにチェックされます。
次は麹造りの段階ですが、昔から一に「麹」、二に「もと」、三に「造り」、と言われた程、麹造りは大切な作業なのです。
今回は、吟醸酒の原料処理の段階までお話ししましたが、吟醸酒は極致の酒と言われる程に、杜氏や蔵人は心と技能の神髄を傾けて醸造に励むのです。また、子育ての様な愛情で造るとも言われます。
世界にまれにみる素晴らしいに日本酒の存在、それは職人芸とも言う吟醸酒であり、常に酒造り一筋に生きる杜氏の心意気とロマンを感じ取ることが出来ます。
酒は微生物と言う生き物が醸すものであり、一種の神秘性を感じます。
|
|
<< 戻る 目次 次へ >>
|
|
|