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日本酒は国酒であり、日本文化そのものであります。
日本酒は一朝一夕にしてできるものではなく、古来からの長い歴史と伝統の中に培われて今日に至ったものであり、現代では原料であるお米の改良から、杜氏、蔵人の技術の熟練により生まれた魂の結晶とも呼称出来得る逸品であります。
醗酵学の権威者である坂口謹一郎博士は、その著者「日本の酒」の冒頭で文化と酒について「世界の歴史を見ても古い文明は、必ず麗しい酒を持つ。優れた文化のみが人間の感覚を洗練し、美化し、豊富にすることが出来るからである。それゆえ優れた酒を持つ国民は進んだ文化の持ち主であると言っていい」と書かれております。
また、日本の酒について「日本人が古い昔から育て上げてきた一大芸術的創作であり、またこれを造る技術の方から見れば古い社会における最大の化学工業の一つでもあると言える。」とされており、世界の国に特産する酒は、その国独自のものであり、国民はそれゆえに無限の誇りと憧れを持っていることは周知の通りであり、酒を人類の文化遺産として讃えられております。
酒が文化を形成するか否かについては、それぞれの立場によって異なることであります。昨今、食文化なる言葉が広く用いられていることを考えると、酒も食文化の大切な一つであると見てよいでしょう。今は、酒は酔いの酒から味わいの酒、そして語る為の酒へと変化している。
今、市場に出回っている日本酒は、様々な名称をつけられて多彩である。それだけ消費者のニ−ズに合った様に多様化したのでありましょう。
それぞれの地方には地方豊かな特製を生かした個性のある地酒があり、”幻”と呼ばれる逸品もあります。
日本酒は級別が廃止され、製法の違いから普通酒以外の酒を分類上、特定名称酒と呼ばれるようになりました。
特定名称酒は、大吟醸酒、吟醸酒、純米酒、特別純米酒、本醸造酒、特別本醸造酒など、その製法や精白の違い等で区別されております。特に吟醸酒は文字通り、米も水も充分吟味して醸造する事こそが大吟醸酒である。
この吟醸の言葉は、大正時代も終わり頃から使われる様になったそうです。しかし、今ではその名を使うには精米歩合等、厳しく定められており、原料米である米にしても酒造好適米を使用します。
「コシヒカリ」とか「ササニシキ」とか飯米として美味しく適した米があるように、酒造りにも最も適した米があります。
米の粒が大きくて、その米粒の中心の心白と呼ばれる部分が大きく、蛋白質や灰分等が少なく、糖化しやすい等の特徴を備えている米がいわゆる酒造好適米と呼ばれています。
新潟県産では五百万石がそれにあり、その好適米の中でも山田錦という品種が吟醸造りには最適である事は、今では好事家ならずとも知れ渡っております。
この山田錦という米は大粒で、色沢のある心白米であり、蛋白質の含有は少なく、吸水性、消化性が良くハゼ込みのいい麹が出来ます。
そして出来上がった酒は香り、味、やわらかさ、ふくよかさ等優れた内容になる事から、この米が酒造好適米としては最高とされています。
この山田錦の生産地は、六甲山脈の北側の山間にあり、兵庫県加東郡から美嚢郡の周辺に限られております。
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