|
|
その国の文化は、酒と共に歩むともと言われています。日本酒は、日本の文化とともに生活の中に生きてきた長い伝統を持っております。社会が近代化すると生活は豊かになり、多様性を増して参りました。
日本の酒造りは、長い歴史の推移と多年にわたる人智の集大成というべきものであり、伝統の中に近代性を備えた世界にもまれに見るすばらしい日本酒の存在を見ることができます。
それは、職人芸ともいえる大吟醸であります。先般は吟醸酒の原料処理の段階までお話し致しましたが、二段目は麹造りから入ります。
酒造りの中で最も重要視し、大切な作業は麹造りです。米を大きな和釜で約一時間程蒸しますが、取り出しが42〜43%くらいの水分を含んでおり、麹室に引き込むまで6〜7%位の水分を蒸発させます。
この時、蒸米も品質をチェックされ、あとどの位で目的の種付水分になるか検討されるのです。30〜33%位に水分調整された蒸米は、白米100s当たり20〜50gの種麹菌を散布します。
まんべんなく種がつけられた蒸米は、温度が下がらぬ様布団で覆い、およそ22時間寝かせるのです。麹菌の増殖が盛んになる蒸米の表面が潤いを生じ、品温も上昇してきます。
破精廻りや品温の調節が容易にできる様に、一瓶の蓋に小分けする。これを盛りと言います。
深夜、蔵人や杜氏は品温度や麹の増殖の具合を見るために麹室に何度も足を運ぶのです。酒蔵の中は冷たくシーンと静まり返っている。麹を覗き込む。麹菌の増殖は確実に進んでおり、杜氏はホット安堵し寝本床に帰る。麹造りは真剣なのです。
麹菌の繁殖と麹の水分の発散させる蓋操作をし、菌糸がよく伸び香気も栗香が出る様になると出麹をする。(麹室から麹を出す作業)麹が出来上がりますと次はもと造りであります。
清酒酵母は、サッカロミセス、セレビシエという酵母を使用する。この酵母は醗酵力が強くエステル生成も強いので、香りの良い"酒母"が出来るのです。
もと造りは、最初が糖下作用を促進させるため暖気入れ作用を行い、ボーメ(日本酒度)16度位程迄糖下が行われると添加した酵母も増殖してボーメも切れ、アルコール濃度も高くなります。
純粋に培養された清酒酵母では、培地1g中に約2億個の酵母が生殖しています。この状態を持続すると酵母はだんだん衰弱又は死滅する恐れがありますので、品温を下げ酵母に休養を与えます。これを、「もと分け」と言います。
日本酒は、澱粉の糖下とアルコール酵母を同時に行う併行複醗酵によって作られる。ビールなどの単醗酵ではせいぜい5%前後のアルコール分しか出来ませんが、この併行複醗酵によると22〜23%もの高濃度の酒を醸造できるのです。
1本のタンクの仕込を行うのに4日かけ、添、仲、留の順に三段階に仕込 みをする。これを本仕込みと言います。
本日は仕込み迄としますが、とにかく吟醸酒造りは蔵人が一丸となり、魂を注ぐ酒造りにかける情熱が必要なのです。
果物からフルーティな香りを得るのは容易だが、穀物である米からフルーティな内容が醸し出せるのは日本酒の吟醸酒ならではの事。 これは世界の酒にも例がないのです。
|
|
<< 戻る 目次 次へ >>
|
|
|