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日本酒の世界にあって、吟醸酒の登場は極端に言えば酔うための酒のイメージから楽しむ為の、味わう為の、そして語る為の酒に変えたと言えるでしょう。
吟醸酒は優雅な酒質を人々の味覚に討ったえ続けてきました。この素晴らしい吟醸酒との融合は、夢や遊びの世界に似ており"華"があるのです。
それだけに、造る人である杜氏達は寝食を忘れるくらいに没頭し、競争をも生み出してきました。そのため、技術はますます向上しましたが、反面杜氏のストレスもたまっていきます。
先般は、吟醸酒の搾り、つまり上槽の段階までお話し致しましたので、今回は搾りから清酒になるまでの内容をお話し致します。
長い間丹念に育ててきた酒をいよいよ搾る日がきた。醗酵したモロミをポンプ又は試し桶で運んで袋詰めを開始する。
1袋に5〜8リットルを詰め、搾り槽の中に平らに、交互に積み重ねる。これを槽掛けと言います。吟醸酒の場合、すべて手作業である。槽掛け当初は垂れ(搾る度合い)も早く、少々白濁した酒が流れ出る。
開始後2〜3時間、まったく圧力をかけない状態で流れ出る酒を荒走りと言います。槽掛け後、上部に蓋と枕木を置き7〜10時間軽く圧力をかける。この間に流れ出る酒を中澄みまたは中走りと言います。
更に槽直しと呼び、モロミを入れた袋を水平に積み替え直し、重圧をかけて酒を搾り出します。この酒を積め酒と言います。
蔵人が精魂込めたキラキラと輝く澄み切った青空のような酒の誕生です。一昼夜で袋の中の酒は搾り出され、残った粕を取り出して上槽工程は終了します。
上槽後、約一週間たってオリ引き(タンクの下方に沈むオリを取り除く作業)を行い別の容器に入れます。酒は更に濾過されて透明な状態にし、瓶詰めされます。
雑菌、冷蔵庫保管、あるいは生として出荷されるのです。ふくやかな香りを漂わせ、口に含むとまろやかな味がのどを潤す。
日本酒は、日本の香りであり、日本の味である。清酒は祖先より受け継がれてきた日本の伝統的な文化であり、日本独特の醸造法によって造られてきました。
前にも述べました通り、日本酒造りは平安時代にさかのぼると言われますが、時代と共にその技術に磨きがかかり、杜氏はお互いに情報を交換し合いながら切磋琢磨し、世界に誇る酒造技術として現実に引き継がれてきたのです。
清酒醸造の特徴と言われる併行複醗酵の複雑さ、雑菌工程のない開放醗酵である為、杜氏は昔からこの難問題に苦しめられてきました。
常に精神、潔斎して神に祈りながら知恵を絞り、経験を積み重ねた、日本独特の酒造技術を編み出しこれを伝承してきたのであります。
明治に入り大蔵省醸造試験場、国税局鑑定部が開設され、酒造の科学的研究と実地指導も行われるようになり、酒造技術は飛躍的発展を遂げたのであります。
杜氏は常に進んで講習会、研修会に参加し、新しい知識技術を吸収し、自らの酒造りに生かすと共にこれを後継者に伝え、その育成に努めております。また、技術、技能の伝承の枠を集めたものが大吟醸酒なのです。
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