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私達酒造りの杜氏は今、酒造りに励んでおりますが、酒造造期に入りますと最近は日本酒の愛好家達がグループで酒作り見学に訪れます。
中には、若い女性の人たちも良く見受けられます。かなり日本酒通の人もおられ、専門的な質問やきき酒をなさって批評もなされます。
結構方々で地酒や吟醸酒等の逸品を飲んでいらっしゃるように、日本酒に対する知識もきき酒に対する味わい方も確かです。
一般的には、日本酒は甘口とか辛口の見分けをしますね。甘口は糖分「ブドウ等」が多く、酸(主として琥珀酸と乳酸)の量が少ないのが特徴です。これに対して辛口酒はアルコールの割に糖分が少なく、酸量が多いのが特徴です。
日本酒の甘口、辛口の造り分けは仕込みの配合の割合等で決まります。つまり米と麹と水の配合の割合を変えたり、麹の作り方を変えたり発酵温度や日数を加減して甘口の度合いを調整します。
又、四段と称し搾る前に醪に蒸したもち米を加えるとか、うるち米で甘酒を加えてるから搾って甘口酒を造ったり、原料のアルコールを添加して辛口酒を作る場合もあります。
良く酒は生き物とか酒は呼吸をしている等と言われますが、そのとおりでせっかく手に入れた銘手でも保存の仕方がいい加減では、風味が逃げたり、味が変質してしまいます。
酒造の中で至れり尽せりの保護を受けて熟成した酒も、市場に出てお粗末な扱いをされては堕酒になってつまりません。
清酒に含まれている物質は、水、アルコール、グルコース(糖分)、有機酸、アミノ酸等がつゞき清酒の骨格を構成していますが、清酒の味は数知れない微量成分によって補われて居ります。
現在まで見出されている微量成分は200を越えていますが、将来どれほどの数の物質が追加されるか見当がつかないほどです。
これらの物質が、熟成中に生成と消失の反応を繰り返し、千変万下するのです。又、日本酒は直射日光を極端に嫌います。
日本酒の変質や劣化は主に温度、光、空気の三つの条件に左右されます。と言うことは、日のあたらない低温の場所が保存に適していると言うことですね。
いったん栓を開けて飲みますと、残りの分は空気に背食するため、酸化現象を起こしている筈ですので変質せぬ様、小瓶に移し変えて冷蔵庫に入れて置くか、新聞紙にくるんで風通しの良い場所に置くのも良いでしょう。
「良い酒は冷や酒に限る」と言う通が多いようです。冷やした吟醸酒をグラスで飲む。そんなスタイルが日本酒のイメージを一新した事は確かです。
だからと言って、「いまどき燗酒なんて」と酒の燗が否定されるのは寂しい限りです。燗酒には冷酒にない効用と又独特の味わいがあります。
数ある酒の中から銘酒を選ぶ時は、お燗ををして酒質を確かめます。燗をした方が味がぐんと良くなる酒を「燗上がりする酒」と言います。
この点、お燗に適した酒を選ぶなら「純米酒」をお薦めします。しぼりたてでなく、火入れしてキッチリ熟成したものがお燗に向く酒の条件です。
「生酒」や「にごり酒」の類は冷やして味わうべき酒です。特に香りを重視するタイプの吟醸酒は燗に向いていません。日本酒愛好家にとって楽しみの一つは、隠れた銘酒に巡り合える幸運ですね。
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