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日本酒焼酎・泡盛ワインその他、新潟の特産品

酒造りに従事して53年。伝統的酒造りの技法を身体で体得した当店オーナー中野三樹太郎が、日本酒のルーツを探り、歴史的時代背景を探りながら「NHK朝の随想」で収録したものをまとめてみたこの文が、消費者の皆様を初め、日本酒愛好家の方々への日本酒への理解を深める事ができれば、また温故知新と言うべき若い酒造後継者達への興味と育成教育への一助けともなれば誠に幸いであります。(平成6年10月〜7年3月放送)

近世以降の酒造りは、酒屋の主人や家族の手ではなく、酒造りの時期の晩秋に杜氏に率いられてやってくる。 出稼人、いわゆる「酒男」「蔵人」又は、地元やむらで呼ぶ「酒やもん」と呼ばれる出稼人の手で造られてきた。

冬期出稼ぎによる酒造りは比較的に新しく、元禄以降1,688年伊丹で寒造りを開始した頃に始まり、更に下って文化文政期から1,804〜1,829年嘉永にかけて定着し全盛期を迎えました。

前にも述べました通り、夏場に農耕、冬場は仕事を失う雪国の農漁民達は、酒屋の寒造り需要と利害が一致し、互いに求め合い両者程良い互恵関係にあったので、年を追って酒男の供給地は灘の地元から摂津、播磨、丹後へと変わり寒造り冬期出稼ぎの関係が続きます。

越後の酒男の起源や成り立ちは詳しくはわかりませんが、北陸や新潟の酒造家の事柄によりますと最初は元禄年間、優れた技術を身につけた西国杜氏を招き、寒造り醸造に励んだとされております。

推察するに、越後のみならず関東や東国における初期の酒造技術はこれら西国杜氏によって伝授されたものと思われます。

地元の酒男達はそれを受け継ぎ地元の国土に適合した関東流、越後流と称される醸造法を考案して、やがて西国杜氏に代わってその地位を高めていったものと考えられます。

私も三もん下の働きだった頃、栃木県で丹波のおやっつさん(親方さん)につかわれた事があり、丈夫な紺色の長い半纏をきて蔵の中を見わまっていた親方さんの姿を思い出します。 蔵人には組織というものがありまして、酒造りの総括責任者である杜氏を蔵内では「おやっつさん、おやじ、親方」とも呼びます。

杜氏は醸造主、即ち社長から一切を委嘱されて蔵人集めの人事権を持ち、火元責任は勿論、若い衆の病気、けが、その他すべての面倒をみ、技術的な事も主人は一切関与せず、昔は請負制も多かったのです。

近年、酒造工全部を杜氏と言う事もありますが、本当は総括責任者のみを言います。杜氏の下に頭役(かしらやく)と申し、杜氏の補佐役で世話焼きとして仕事の割振り等を致します。

麹を造る麹師、酒のイ−スト造り、酒母を造る人をもとまわり、米を蒸す一切の仕事を管理する人を釜屋、酒を搾る槽(ふね)の責任者を船頭等々、上人、中人下人と言われる働く人が居りました。その他、飯炊き学校を出たばかりの年少者に炊事や居間の掃除、使い走り等をやらせます。

この組織は、江戸時代の農村における名主(庄屋)、組頭、百姓三役、それに本百姓水呑百姓等、郷、村制をそのまま移行した点は極めて興味深いものがあります。 今でも村落に入りますと、その名残が残っております。杜氏制度は昔の軍隊同様、厳しい階級制度と作業の分担が長い歴史の間に確立されたのだと思います。

今もこの制度の名残りは変遷しながらも依然として残っております。作業の分担と責任の明確、微生物相手の酒造りではこのように統制をとって蔵人が一心同体になって専念してこそ、良い酒造りにつながって来たものと思います。
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 目次
第1話 日本酒と私の酒造り人生
第2話 酒を醸す微生物との出会い
第3話 お酒のプロローグや歩み
第4話 酒造りの業とその変遷
第5話 日本の酒造りとその推移1
第6話 日本の酒造りとその推移2
第7話 酒男の沿革と蔵人の組織
第8話 酒人の蔵入りと蔵人の精進
第9話 酒造談義あれこれ
第10話 極致の酒・大吟醸酒
第11話 文化と日本酒の中での吟醸酒
第12話 麹菌と日本酒の酒について
第13話 吟醸造りに魂をそそぐ
第14話 吟醸酒造りと出会い
第15話 吟醸酒について
第16話 おさけまんだん
第17話 日本酒の味とその褒め言葉
第18話 飲酒者サロン
第19話 阪神大震災による酒蔵壊滅復興への願い
第20話 やさしい酒造談議 (酒の熟成を考える)
第21話 酒の嗜好食品性について
第22話 清酒多様化の方向
第23話 清酒か日本酒か?
第24話 清酒鑑評会やきき酒のコツ
第25話 日本酒造りと後継者
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