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日本酒焼酎・泡盛ワインその他、新潟の特産品

酒造りに従事して53年。伝統的酒造りの技法を身体で体得した当店オーナー中野三樹太郎が、日本酒のルーツを探り、歴史的時代背景を探りながら「NHK朝の随想」で収録したものをまとめてみたこの文が、消費者の皆様を初め、日本酒愛好家の方々への日本酒への理解を深める事ができれば、また温故知新と言うべき若い酒造後継者達への興味と育成教育への一助けともなれば誠に幸いであります。(平成6年10月〜7年3月放送)

稲の刈り入れが済むと、蔵入れの季節が待っている。美しい山の紅葉がさびかかってくると、蔵人たちは来春まで長い別れを家族と交わし、蔵元へと向かう。 人の心の欲しい秋、木の実も落ち、何となく哀愁を感ずる。若い頃は、別れの辛さを感じた。だが、「大事な仕事だ」と心に言い聞かせて家族と別れてくる。

蔵元では、大きな財産を預ける蔵人たちを暖かく迎え入れる。蔵入りをすると、早速蔵の清掃が始まり、掃除は極めて丁寧に、造り蔵等は天上まで綺麗に雑巾をかけ、蔵内全体を殺菌消毒する。又、良い酒を造るには米・水・当時の腕・の三拍子が揃っている事が一番大切な条件である。

特に水は、吟味する又は大量に使用する為、何本か井戸を掘ってある。井戸は必ず井戸替えをし、清める。

仕込み水として良質でない時は、山から天然湧水を引き、その天然湧水は吟醸酒に深い味わいを与えてくれる。こんこんと筧から湧き出る水は酒造りに携わるものにとって壮厳にさえ見える。

蔵の清掃が済めば、神主から蔵のお祓いと井戸のお祓いをして頂く。酒蔵では、仕込蔵の正面に酒神である、松尾大明神が祭られてあり、神の前で社長をはじめ蔵人一同、今年の造りが良酒醸造と蔵人たちの無事息災を祈願して、玉串を捧げる。

神主の祝詞は、蔵の中に朗々と響き、身の引き締まる思いがする。その夜は顔合わせと称し、蔵人の紹介や今年の役職についても紹介される。そして主人共々、蔵人一同宴会をするのが一つの習慣になって居ります。酒の宴は夜が更けるまで続くが、酒人達の心は早や今年の酒造りに馳せているのである。

前にも話した通り、酒造蔵では仕込蔵の正面に酒の神様として松尾大明神を祭り、汚れを哀れむとして女人禁制としたのは、千石酒屋に工場制手工業方式が採られ、農漁村から若い季節労働者が入り込む様になった元禄期頃と思われます。

蔵人は、蔵の出入りには必ず替え草履に履き替え、蔵内の神聖さと清潔さを保ったのです。現在もこれはどこの蔵でもキチンと守られています。

伊丹(現在の兵庫県)の伊丹諸白が「丹醸」として台頭してきた頃の「西鶴織留」に『池田伊丹の売酒水より改め、米の吟味、糀を惜しまずさわりある女は、蔵に入らず男も替え草履はきて出入りすれば軒を並べて今の繋盛栄えて上々吉々諸白』と伊丹郷の造り酒屋を描写しております。

「酒庫口の履き替え草履寒造り」とは泊雷の詠んだもので、蔵内の草履は履き替えで清潔さを保ち、酒造りに精神した彼等こそ酒造技術を今日の水準にまで高めた人達である。
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 目次
第1話 日本酒と私の酒造り人生
第2話 酒を醸す微生物との出会い
第3話 お酒のプロローグや歩み
第4話 酒造りの業とその変遷
第5話 日本の酒造りとその推移1
第6話 日本の酒造りとその推移2
第7話 酒男の沿革と蔵人の組織
第8話 酒人の蔵入りと蔵人の精進
第9話 酒造談義あれこれ
第10話 極致の酒・大吟醸酒
第11話 文化と日本酒の中での吟醸酒
第12話 麹菌と日本酒の酒について
第13話 吟醸造りに魂をそそぐ
第14話 吟醸酒造りと出会い
第15話 吟醸酒について
第16話 おさけまんだん
第17話 日本酒の味とその褒め言葉
第18話 飲酒者サロン
第19話 阪神大震災による酒蔵壊滅復興への願い
第20話 やさしい酒造談議 (酒の熟成を考える)
第21話 酒の嗜好食品性について
第22話 清酒多様化の方向
第23話 清酒か日本酒か?
第24話 清酒鑑評会やきき酒のコツ
第25話 日本酒造りと後継者
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