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今の時期は大寒と言い、寒さが一段と厳しくなってくる時期です。
近年は暖冬続き、皆さんから「今年は暖冬の様ですね。酒造りは大変でしょう。」と言って励まして下さる。とは言っても2月に入ると必ずと言っていいほど、大なり小なり雪が降る。
新潟の冬は、雪に覆われ天然の冷蔵庫と言われる程に廻りは雪の壁、空気も降る雪に濾過されるのかの様に汚れもきれいになる。また、雪による温度と湿度は酒造りに最高の条件の条件なのです。
古来から酒は寒造りと言われる様に、1月から2月にかけてどこの蔵でも最も品質の高い大吟醸酒の造りに入ります。ですから今が吟醸酒の最盛期なのです。
杜氏さんは蔵入りの時から、製造計画作成の中に寒入りの時期を睨んでキチンと変更する事なく、仕込みの日を決めておくのです。この時期になると蔵の中では一種の気迫を感じます。
杜氏さん初め蔵人達は気を引き締めて、洗い物一つをとっても必要以上に丁寧にそして神経をピリピリさせていますね。今年も雪が多くきっと立派な名酒が醸し出せれるでしょう。
昔から寒風吹きすさぶ中で、酒男達が酒蔵の中で新酒の芳香を漂わせながら酒造りに励む姿は、日本の冬の風景詩であった。肌をつんざく真夜中に酒蔵の窓から流れ出る酒造り唄は、のどかな良き時代の働く者達の歌声でもあったのでしょう。
木と土でつくりあげられた酒蔵、水と米から醸し出される酒、そして酒造りに用いられる桶と樽、すべてが自然体である。
酒屋者の間には「唄半給金」という言葉がある。昔は唄もまた技術の一つであったのであります。
酒蔵は唄に明け唄に暮れる。唄で時を計り、唄で互いの心を合わせる。歌詞の中には酒造りへの、そして人生の哀歌が込められている。酷寒での厳しい酒造り作業であるだけに「唄半給金」の言葉が生きてくる。
また、「酒屋万流」という言葉もある。杜氏の出身ごとにそれぞれの流儀があると言う意味なのであろう。各流儀によって酒造りの作業内容と唄も多少異なるのであります。
越後杜氏の歌う唄を「越後流」また、関東地方の酒蔵元でも歌われるので「関東流」とも言う。関西では兵庫県の丹波。但馬の城崎杜氏さん方が歌う一種独特な「関西流」もあります。これこそ農耕文化から始まったわが国の風土に適合した土着産業であったのです。
しかし、時代の波はこの酒造業を近代化に導き、鉄筋造りの四季醸造蔵がそびえ立つ様になって、昔の酒造り風景は漸次忘れ去られようとしています。
白壁の酒蔵に代わってコンクリートのビルは冷たく、桶はステンレスやホーローびきのタンクに変わり、出稼ぎの蔵人達は通勤のサラリーマンとなり伝統産業は装置産業に変わりつつある。
今、さまざまな社会現象を踏まえ、日本酒の生産体制についてもさまざまな論議がなされており、それぞれ進級はざまの中で私どもは新しい酒造り、楽しく働ける職場造りを目指して酒造りに専念しております。
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