|
|
|
|
それいゆ メルロー 2020年のきろく |
|
|
”自社畑クロニクル最終章、旭洋酒のヴァラエタルシリーズ「きろく」 ”
栽培醸造家のオーナー夫婦が小規模だからこそできる隅々まで目の行き届いた丁寧な葡萄栽培と醸造に徹し、風土の良さを表現した家族経営の小さなワイナリー旭洋酒の限定品、自社畑で栽培法からこだわり、この土地ならではの美味しさを追求した自社畑のヴァラエタルシリーズ「きろく」のメルローです。
多品種をブレンドするアッサンブラージュに比べて、その年の特徴が顕になるモノ・セパージュ。そのシリーズ名を「きろく」としたのは、もはや高品質を競って何らかの記録"record"を目指さない事を表明するためでもあります。
山梨市八幡地区と岩手地区の自社畑の内、最も良く熟した房のみを粒選りで収穫し丁寧に醸造、フレンチオークの2〜3年樽(熟成期間9か月)と瓶で熟成させました。機械で千切れた細かい梗は、手作業で取り除き、丸い粒のまま徐々に潰していくマセレーションで自然な果実味を出すよう心がけています。
四つの自社畑に植えられていたメルローの内、温暖化の影響で熟さなくなった最も標高の低い「陽畑」を、前年の収穫を最後に手放したため、この年から大幅減産となったメルロー。残った二つの畑からAクラスに選別された房、更にその房の中でも色の薄い粒を抜き取りながら収穫した入魂の二樽です。
2020年は梅雨が一か月以上続き、その後1ヶ月強は猛暑。日本は亜熱帯化しているのかと疑った最初の年でありました。長雨の影響により殆どの品種でべと病と晩腐病が多発、糖度の上昇は鈍く、暑さで酸だけが急激に減少、収穫を先送りにした品種では味わいのバランスが崩れてモノセパージュでの製品化を断念したものもありました。
このメルローについては、熟度ごとの選別と健全なうちの収穫が将来を決定づけたのだと、4年の熟成を経た今、実感する事となりました。
濃縮プルーンシロップ、熟したブラックチェリー、腐葉土や松ぼっくり、森の茸などの香が小気味よく立ち上る。口に含むと、まだ穏やかな酸があり、ひっそり鼻孔を抜けるトリュフの香と共に、ブラックチェリー様の果実味が滑らかに伸びる。アフターに少しビターなシガーのニュアンス。
山葵とともに牛ステーキやローストビーフ、牛や豚の煮込み、茸リゾット、焼き鳥(タレ)各種、鰻の蒲焼、ウォッシュチーズ、ドライフルーツやスパイスの入った焼き菓子などと。
| |
|
■葡萄品種:メルロー ■産地/畑:山梨市八幡地区、岩手地区自社畑 ■貯蔵/熟成:樽熟成9ヶ月 ■タイプ:フルボディ ■アルコール度:12%
|
■納期:通常1〜3日 ■生産本数:631本 ■保存:冷暗所 ■配送:普通便 ■化粧箱:無し
|
|
|
【 きろくシリーズコンセプト 】 |
|
植え付けから古い樹で20年以上の歳月を経た自社畑の欧州種。その年もっとも良く熟した房のみを選別して収穫・醸造し、これまで平仮名の「それいゆ」シリーズとしてリリースしてきました。世界の銘醸地に比べて温暖湿潤な日本の山梨で、世界共通品種でどこまでのものが作れるのか。日本の山梨の、私たちならではの味わいとはどんなものなのか。それを知りたくて私たちは樹を植えました。
それから20年。幾度かの当たり年を経験する事ができたことはとても幸せでしたが、温暖化の影響は当初の想像をはるかに超え、この20年で豪雨や長雨の被害、高温化によるブドウの着色障害などが顕著となりました。質量ともに安定した地域を産地と呼ぶとすれば、それは確実に、標高と緯度の高い地域に移っています。
現在自社畑では温暖化に対応しいくつかの別品種の栽培をスタートしています。これらの品種をブレンドして質・量ともにバランスのとれたワインを生産する事は理にかなっています。
しかし一方で、気候条件に恵まれさえすれば良いワインが作れるのか、そもそも良さとはどういうことなのかと、折に触れて考えるようになりました。そして、良さというものが喜びや幸福に関係づけて語られるのであれば、それはそのものの中に存在するのではなく、そのものを通じて開かれる喜び、生の肯定、感謝の気持ちに他ならないと考えるようになりました。それは追い求めて勝ち取るようなものではなく、与えられた環境や変化をまず受け入れることによって開かれる地平ではないかと。
そこで自社畑では、品質の良さで記録を目指すのではなく、この加速する温暖化の中で、一年ごとのワインの営みを忠実に記録していくことを、これからの20年のワインづくりの目的とする事にしました。
もしも死の直前に、走馬灯のように過去の思い出が蘇るとしたら、それは、雨上がりのブドウの葉が陽に照らされて輝く光景、美味しそうに葉を食べるイモムシ、忙しく動き回るテントウムシ、そして一緒に収穫した仲間たちや、訪れてくれた人たちの笑顔がちりばめられた映像であろうと思います。
一つ一つは何でもないシーンでも、辛く苦しい痛みの記憶の上にそっと積み重ねられていく色のように、生きる喜びを補給してくれた風景。それらを写し取るように、毎年のワインを記録していきたいと思います。
エチケットデザインを依頼した版画家の雨宮千鶴さんが、コロナ禍で一日一枚製作した小さな作品群「日々の形跡」"Daily Traces"。まさにそのような姿勢で、過酷な状況下で実ったその年年のブドウと、それと共に生きた私たち自身の、最後の年次記録"chronicle"として、このシリーズを可能な限り続けていきます。
|
|
|
※ 買い物かご以外でも、オーダーシートからもご注文いただけます。 ※ ご利用の場合は、左の「オーダーシート」ボタンをクリックして下さい。 |
|
|