創業明治八年（1875年）、鮎正宗酒造の位置する新潟県妙高市猿橋地区（旧新井）は、新潟県でも有数の豪雪地帯、国道で市街地を抜け、深い緑に包まれた山あいの里・猿橋の地に蔵を構えます。この空気の澄んだ清らかな山峡は、寒仕込みの頃になると酒蔵が二メートルを越す深雪の中にすっぽりと覆われ、気温を約五度で一定に保ち、繊細な調整が求められる酒造りには最も適したクリーンで安定した環境を与えてくれます。

創業は鮎正宗酒造初代「飯吉彦左衛門氏」が、枯渇することを知らない良質の湧き水で酒を醸した事により始まります。その湧き水は、．．．もっと見る

創業明治八年（1875年）、鮎正宗酒造の位置する新潟県妙高市猿橋地区（旧新井）は、新潟県でも有数の豪雪地帯、国道で市街地を抜け、深い緑に包まれた山あいの里・猿橋の地に蔵を構えます。この空気の澄んだ清らかな山峡は、寒仕込みの頃になると酒蔵が二メートルを越す深雪の中にすっぽりと覆われ、気温を約五度で一定に保ち、繊細な調整が求められる酒造りには最も適したクリーンで安定した環境を与えてくれます。 創業は鮎正宗酒造初代「飯吉彦左衛門氏」が、枯渇することを知らない良質の湧き水で酒を醸した事により始まります。その湧き水は、初代の名を冠し「彦左衛門の水」と呼ばれ、酒蔵に寄り添う山の地下深くより自然に湧き上がる伏流水です。今尚、母屋の横井戸からこんこんと湧き出ており、毎時６トンの水量を誇ります。 鮎正宗（あゆまさむね）という酒名は、昭和の初め、酒蔵ほど近くにある保養地として有名な妙高高原町の赤倉に滞在された京都伏見の「若宮博義殿下」から、この地で鮎釣りをされた折りに名付けられています。 わずか千石の小さな造りの蔵なれど、新潟県産の選び抜いた米と良質の湧き水で仕込んだ地酒は、関東信越局、全国新酒鑑評会等入賞の常連、知る人ぞ知る新潟の隠れた銘酒です。原料米の蒸し方は、全て抜けかけ方にこだわります。吹き抜け法とも呼ばれる蒸し方で、蒸気を上げた所に米を張り込んで蒸していきます。大変手間は掛りますが、米粒が潰れず円い形のまま蒸し上がるので発酵が穏やかに進む特徴があります。 鮎正宗の酒を端的に言うと、「やわらかな口当たりで、さらりとした甘さを感じながら、飲んでいるうちに甘さがすっと消え、次の一杯に進む酒」です。新潟清酒では数少ない、さらりとしたやや甘口を特性にしており、現代の競争社会や流行とは無縁のどこか原風景を想わせるほのぼのとした印象を感じさせてくれる日本酒です。 豪雪の中で生まれる雪解け水のごとく鮮烈で繊細な味わい、山あいに育った米の旨みを活かし、蔵内よりこんこんと音を立てながら自噴にて自然にほとばしる湧き水と越後杜氏の確かな技で生まれる銘酒「鮎正宗」、澄んだ空気の清らかな山峡で自然の恵みに感謝し、伝統の技と味を受け継いでゆきます。