創業明治23年（1890年）、岩の原葡萄園は妙高連山の裾野がなだらかに日本海に接する「頸城（くびき）平野」にあり、かつて城下町として栄えた雪深い越後高田（現上越市）の地に葡萄園を拓いてワイン造りを始めました。創業者である川上善兵衛氏が、当時自宅の庭園に鍬を入れ、土地を整理して農園を開いたことでその歴史は始まります。

越後高田の大地主の家に生まれた川上善兵衛氏は、地元地域の発展を常に考えていました。当時の高田は有数の豪雪地で、農民たちは常にこの雪に悩まされながら米作りに取り組んできました。また、平野を横切る大小河川による．．．もっと見る

創業明治23年（1890年）、岩の原葡萄園は妙高連山の裾野がなだらかに日本海に接する「頸城（くびき）平野」にあり、かつて城下町として栄えた雪深い越後高田（現上越市）の地に葡萄園を拓いてワイン造りを始めました。創業者である川上善兵衛氏が、当時自宅の庭園に鍬を入れ、土地を整理して農園を開いたことでその歴史は始まります。 越後高田の大地主の家に生まれた川上善兵衛氏は、地元地域の発展を常に考えていました。当時の高田は有数の豪雪地で、農民たちは常にこの雪に悩まされながら米作りに取り組んできました。また、平野を横切る大小河川による洪水でまともに米を収穫できない年もあり、その苦しさは「三年一作」という言葉で表現されていました。そんな状況を幼い時から見てきた善兵衛氏は「殖産興業・国利民福」を理念に、郷土を生かすことを考えるようになります。 そして、その時に川上家と親交のあった勝海舟のもとを訪問して相談をし、激励されました。勝海舟のもとに足繁く通ううちに海外から渡ってきた「葡萄酒」を振る舞われ、海外文化の香りを感じます。そして、葡萄は荒れ果てた土地でも栽培でき、田畑を潰さずに済むため、新しい産業として農民救済にもつながるとワイン醸造に着目しました。 明治時代には、日本の在来葡萄にワイン用好適種が存在しなかった為、当地の気候風土に適した葡萄品種を求め、「良いワインは良いブドウから」の思いから品種改良に没頭し、1万311回の品種交雑の中からマスカット・ベーリーAをはじめ、22品種（ブラック・クイーン、ローズ・シオター、レッド・ミルレンニューム、ベーリー・アリカントAなど）の優良品種を世に送り出しました。それらの品種は現在全国各地で栽培され、日本ワインの主力品種となっています。 また、ワインの醸造方法にも工夫を凝らし、良質なワインを造るため、発酵温度コントロールや夏場のワイン熟成庫の温度管理に越後名物の雪を利用しました。冷却設備の無い時代に、ワイン熟成庫である第二号石蔵（平成2年3月、上越市文化財に認定）に雪室を併設し、雪を保存して雪による冷却を実現します。それから100年以上経った現在、岩の原葡萄園では、Co2の発生量を削減して環境負荷を軽減することを目的に雪室を復活させました。 日本ワインの発展にその生涯を捧げた川上善兵衛氏は、今日の国産ワインの礎を築いてきたその偉大な功績を称えられ「日本のワインぶどうの父」と呼ばれています。創業以来120年以上に渡り、善兵衛氏が葡萄とワインにかけた情熱を引き継ぎ、雪国ならではの独特な気候と高品質の日本ワインを造りだす努力を惜しむことなく続けています。 一世紀余りの時を超えて、日本のワインの歴史を物語る岩の原葡萄園は、100有余年の歳月を重みが生み出す品格と最高級ワイン造りへの果てしない情熱を今も変わらずに伝えています。